2016年10月5日水曜日

新商品開発に必須な要素は、仲間作り


 地域の産業を成長させるために必要な要素はなにか?

「地域を愛して社員とともに育ち、地域の資源を活かし、地域のニーズをふまえて絶えずイノベーションを起こしていく起業家魂こそが、地域再生の大きな担い手であると痛感している」 

 宮崎大学の根岸准教授が「中小企業と地域づくり」(鉱脈社)にて述べている。

 地域の産業を成長させるために必要な要素は、資本主義社会が続く限り、地域発のイノベーションであろう。
 イノベーションに必要な要素は、新しい知(まだ認知されてない知)と、それを活用する戦略であるが、そのような技術的なことの前提として必要なものがある。
 それが、諦めない強い想いであろう。根岸先生もご指摘の起業家魂である。この諦めない強い想いこそが、ガソリンとなって前進し、新しい知を産みだし、戦略を構築すると言えよう。

 しかしながら、諦めない強い想いは、経営者と言っても維持することが困難だ。例えば、30代の社長がこれから30年間、常に諦めない想いを維持し続けることは困難であろう。

しかしこれを維持する方法がある。信頼できる仲間たちと想いを共有し、想いを育むことによって、その諦めない想いは、維持するというレベルではなく、さらに成長し、もっと大きな想いとなっていく。孤独な戦いでは、三蔵法師でも天竺に行くのは困難であろう。信頼できる仲間とイノベーションへの道程を共に歩み続けることで、諦めない強い想いが維持できる。

 ところで、私は、職業柄、弁理士という仕事をしているため、発明やアイデアに対して特許を取得し、知的財産という形で発明者が権利を取得する手伝いをしている。しかしながら、一方で、一人のアイデアで作られた発明品では、特許が仮に登録されても、売れない商品が多いことに気が付かされる。その発明の”知”が、その人のもののみであるので、発明品、デザイン、ネーミング等に他人の視点からの“知”が十分に反映されていない場合が多いからである。

 現在、イノベーションと呼ばれる商品は、”知”がミックスされた商品であり、アップルのiPhoneは、約1万の知的財産権が含まれていると指摘する学者もいる。

 すなわち、本当に売れる商品を開発するならば、多くの信頼できる仲間の意見を取り入れる必要がある。それは、単に発明のアイデアのみではなく、デザインやネーミング、生産方法、流通方法、販売方法など、商品が産まれて消費者の手に渡るまでの多くの”知”がミックスされることが、ヒット商品には要請されているのだ。したがって、この意味でも、信頼できる仲間との商品開発が重要ではないかということを提案したい。

 一方で、新商品開発段階で、アイデアやデザインを他人に模倣された、盗用された方が弊所に相談に来るケースも枚挙にいとまがない。すなわち、信頼する仲間と思っていたら、裏切られたケースである。ここで理解できるのは、新商品を開発するとは、商品を創り出すとともに、自分が信頼できる人材を創りだすということであろう。これはまさしく、発明者及びその起業家自身の人格的な成長こそが、新商品開発に必要ということも言えよう。 (宮崎日日新聞 マーケと知財 コラム24回)