2016年12月31日土曜日

フラッシュが光を与えるのは写真?それとも貧しい人? 発明が変える人々の意識

    米国でベストセラーの本を紹介します。『世界をつくった6つの革命の物語』(著・スティーブン・ジョンソン、朝日新聞出版)には、人類史の中で、発明が世の中の意識を変えた例が紹介されています。
 博学者スミスが1861年、ピラミッドの内部の真っ暗な「王の間」を撮影しようとしたとき、ガス灯、ろうそく、たいまつで暗い「王の間」を撮影しようと試みましたが、どうしても撮影ができません。そこで、マグネシウムを火薬と混ぜて閃光を起こすと撮影ができたのです。それが、今のカメラのフラッシュにつながりました。さて、このフラッシュの発明で、世の中はどう変わったでしょうか?それまで、暗く撮影できなかった荒廃したスラム街が、フラッシュにより鮮明な写真として新聞に掲載され、人々が貧困なスラム街の生活を知ることとなりました。これにより、世論が動き、州の法律が制定され、スラム街の衛生改善が行われたのです。つまり、フラッシュの発明は、高価なカメラを使用する人とは全く関係がないスラム街の住民に、文字通り、「光を与えた」ということです。

 それでは、欧州の個人主義やルネッサンスに影響を与えた発明はなんでしょうか?それまで、人は、水たまりか金属の反射でしか自分の顔や身体を見ることができず、自分自身を明確に認識できませんでした。それが、「鏡」を発明することにより、人は自分自身を視覚にしっかり捕らえることができるようになり、「個」の認識が生まれたのではと言われています。個人である自分自身を見つめ直すきっかけを、鏡という発明が与えたとも言えます。

 ところで、私は仕事柄、「本当にすごい発明って、なんでしょうね?」と議論することがあります。私は、「人々の意識を変える」ような発明ではないかと思います。今の時代で、人々の意識を変える発明って何でしょうか?イノベーションと言う言葉に既に飽きさえも感じる現在、そんな発明はあるのでしょうか?例えば、人工知能、IoT (Internet of things)は、その可能性があると企業では捉えられているようで、これらの分野は、今年、多数の特許出願がされています。確かに、人類全体でとらえると、世界的なトレンドは、そうかもしれません。ただ、そこまで大きな発明をするのはちょっと難しそうなので、まずは、身近な人々の意識にフラッシュのように「光を与える」アイデア、発明から考えましょうか?あなたの身近な人への発明が、思いもよらぬ人への意識を変えるきっかけになるかもしれません。知的財産が世の中を変えるとは、まずは、人々の頭の中を変えることなのかもしれませんね。

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