2014年5月18日日曜日

オープンイノベーションを中小企業に

最近「シェア」という言葉が、業界の市場占有率を意味する言葉から、フェイスブックやツイッター等で、個人のつぶやきの共有を意味する言葉になった。

時代の流れは、一人で独占するより、他人と共有することを推奨しているのであろうか。そして、ビジネスまでも共有する時代になりつつある。それが、オープン・イノベーションという考え方だ。

米国半導体王手のインテルは、「インテル・インサイド」というコマーシャルで有名なように、パソコンの部品であるCPU(中央集積回路)の製造販売メーカであるため、CPUとそのCPUにデータの入出力を行う周辺の基板部分(マザーボード)の技術に特徴がある。彼らは、このCPU部分とマザーボード部分との両方の特許を取得するが、マザーボード部分に関しては、協力会社である台湾のメーカに安く特許をライセンスさせ、自由に製造させる。一方、CPUの部分は、他社へのライセンスを許さず、自社のみが製造・販売した。すると台湾メーカが安くマザーボードを販売することで、市場に多くのマザーボードが流通し、このマザーボードを使って、NECなどのパソコンメーカが組立てを行い、パソコン販売を始める。この際、このマザーボードに、インテルのCPUを内蔵させないとパソコンは動かないため、販売を独占しているインテルのCPUを、NECが購入して、市場に販売するようになる。結果として、インテルのCPUが高く多く売れるのである。すなわち、自社の技術の一部は、イノベーションを誘発するため台湾メーカのような他社に自由に使わせて、自社のコアとなる技術は、特許でしっかり防衛し、自社が独占し、利益を確保するということである。

「知的財産権なきイノベーションは慈善事業である」(大阪大学客員教授 玉井誠一郎氏)と指摘されるように、何か商業的な成功をするのであれば、どこか自社を守る部分を設けておかないと、他社による競合製品の進出により、持続的な経済活動は困難となるということである。この考え方は、「オープン&クローズ戦略」(関西学院大学客員教授の小川紘一氏)と言われ、自社のどの部分をオープンにして、どの部分をクローズにするかという「知」のマネジメントの重要性が指摘されている。この戦略は、大企業のみならず、中小企業にも応用できる。

都農でトマト鍋の元を製造販売している「都農もりあげ隊」代表の矢野純子さんは、デザイン化された「都農トマト鍋」という文字で商標を取得するか「都農もりあげ隊」という製造者名で商標を取得するか悩んでいた。矢野さんは、都農全体でトマト鍋を流行らせたいという意思をお持ちで「都農トマト鍋」の言葉を自分だけが独占している印象を与えたくないとのこと。でも、出所を示す「都農もりあげ隊」は真似されたくない。そこで、「都農もりあげ隊」の商標を取得した。「都農トマト鍋」という言葉をオープンにすることで他社や行政の協力を得られる一方で、自分たちの製造者のブランドを商標権で守る。

ビジネス成功の確率を僅かでも上げるため、小さくとも有効なオープン&クローズの考え方を意識したい。