2011年11月21日月曜日

技能を技術に移転する際に、特許が役立つ

宮崎県工業センターの責任者の方に、県内企業の技術事情についてお聞きする機会がありました。

「県内の企業では、まだまだ、職人の経験や勘でやっている仕事が多いんです。作業の一つ一つを数値化したり、加工などの動作を単純化するまではいたっていません。職人の経験で製品を完成させても、オートメーション化された機械で製品を完成させても、どちらも製品はできますが、効率化という点で、異なってきます。」

「どういうことですか?」

「例えば、製品を作るための原材料を、効率化によって、少し減らすことが出来れば、原料費がうきますよね。」

「なるほど。」

「現在のように経済状況が悪いなかで、少しでも利益率を伸ばしたいなら、職人の技能でやっている部分を、誰でもできる技術に落としこんで、効率化を少しでもすれば、地域経済も良くなるのではと思います。まして、技能のある職人は、高齢化してきているので、技能の伝承をしなくてはいけませんが、職人に何年もついてこれる若者は、今の時代は、少ないです。ですので、結局、職人を要請できず、その企業は、技術力を失うということになりかねません。地域にとって、技能を技術に落としこむことは、生き残りのための大切な手段になると思います。」

「この技能を技術に落としこむ際には、ソフトウェアはとても効果を発揮するはずです。IT企業さんは、現在、インターネットやスマートフォンに注目していますが、我々のような中小企業の頭脳を作ってくれる企業が増えてくれても良いのではと思います。」

確かに、大田区や北九州を始め、日本各地の中小企業の職人の技能を技術に変えていかないと、高齢化によって、その職人さんを失って、結果的に、企業が衰退するということは大いに考えられます。

しかし、この技能を技術にすることは、問題点もあります。

技能を技術にしてしまうと、技術のほうが、技能よりも伝承が早くなるので、中国やブラジルに持っていかれてしまう可能性が高まってしまうのです。

と言いますのは、技能であれば、その職人しかその方法を実施できないので、その国で、同じことをできる職人が育たない限りは、製品を作ることはできません。

しかし、技術であれば、その製造装置を、その国に持っていけば、すぐに、製品を作れてしまうのです。つまり、中国などの安い労働力で、その製造装置を使えば、同じ製品を安く、簡単に作ることが可能となってしまいます・・。

では、どうしたらよいのでしょう・・。

技能にしておかないで、技術にすることは大事です。ですが、技術流出のリスクも高まる・・。その場合は、その国で、その製造装置や製造方法の特許を取得することが、解決方法の一つであると言えるでしょう。つまり、その製品を他人に作られてしまう可能性がある国にて、特許を取得して、日本の中小企業が独占的な実施を確保することです。

退職者による技術流出や、製造装置の海外への販売による技術流出は、自由な社会では、止めることができないでしょう。でも、特許権であれば、貴社の技術開発は保護されます。むしろ、ライセンスを許諾すれば、中国人が中国で実施していて、あなたの企業は、中国で何もしないでも、十分なライセンス料が入ってくる可能性があります!?

(そんな、うまくいく話ではないと思いますが、理論上は可能ですね。中国では、特許権を理解してもらって、かつ、技術的範囲に入ることを理解してもらうのが大変と聞いています。しかし、将来的には、中国の知財モラルも上がることを期待して、ライセンスを期待してもよいのでは、ないでしょうか。蛇足ですが、中国では、権利の対象がデザインである意匠のほうが、見た目でわかるので、侵害を理解しやすく、権利行使しやすいという話も聞きます。)